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実は鉄はエコ素材!リサイクルの仕組みや課題
私たちの住む地球で1番多い金属資源が鉄で、地球の重さの1/3を占めているといわれます。また、地球上の金属でできているものの90%以上が鉄からできています。今回は、このように地球にとってなくてはならない物質である、鉄のリサイクルについてご紹介していきます。
目次
鉄はほぼ100%リサイクルされている
例えば、自動車用鋼材は95%、スチール缶は93.9%のリサイクル率を誇る*など、金属の中でも鉄は高いリサイクル率で知られています。
その理由としては、分別のしやすさと、リサイクルしてもほとんど品質が低下しないことが挙げられます。
*日本製鉄「季刊 新日鉄住金 vol.20」
鉄は簡単に不純物を取り除ける
■不純物の除去のしやすさ
出典:新日鉄公式HP
金属は炭素や合金元素を混ぜて製品化されることが多いため、再利用するためにはそれらを取り除き、元のきれいな金属の状態に戻す必要があります。
鉄は他の金属に比べてそれらの不純物を簡単に取り除くことができるため、リサイクル前とほぼ同じ品質の鉄に戻すことが可能です。
鉄には多くの不純物よりも酸化しにくいという性質があるため、溶けた鉄を入れる転炉の中で鉄に酸素を吹き込み酸化させることで、鉄以外の不純物を容易に除去することができるのです。
鉄は無限にリサイクルできる「クローズド・ループ・リサイクル」
鉄は材質の持つ性質を保ったまま品質を落とさず無限にリサイクルできる方法を、「クローズド・ループ・リサイクル」といいます。環境に優しいリサイクル方法として推奨されています。
一方、他の金属やプラスチックなどの材質はリサイクルするたびに品質が劣化し、同じ製品にリサイクルできない場合もあり、最終的に使える用途が限定されることになります。
このようなリサイクル方法を、「クローズド・ループ・リサイクル」に対し、「オープン・ループ・リサイクル」と呼ばれます。
鉄のように終わりなくリサイクルできる材質を使うと、ゴミの量を減らすことにもつながるでしょう。
鉄のリサイクルの工程
ここからは、鉄のリサイクルの工程をご紹介していきます。鉄鋼製品はこのようなクローズドループリサイクルにより、昔から効率的にリサイクルされています。
1.ゴミの中から磁石で鉄を選別
磁石にくっつくという性質を利用して、ゴミの中から鉄を選別します。
2.選別した鉄をスクラップにする
ビルや自動車、街、家庭から集めた鉄をスクラップにします。
大型構造物を的確に切断するギロチンシャーと、主に家庭などから集められた電化製品などを粉砕するシュレッダーという手法があります。
3.鉄を転炉・電炉で融解する
転炉や電炉で鉄を溶かして、炭素や不純物を取り除きます。この工程を行うことで、銑鉄は丈夫な鋼鉄となります。
溶けた鋼は連続鋳造設備により鋼片という半製品に固められスラブ、ブルーム、ビレットという大まかな形に。その後、加熱され、圧延機で押し伸ばされて線材、厚板、薄板、鋼管など、いろいろな形の鋼材になります。
4.新しい鉄素材に再製品化する
再び新しい鋼版や建築資材などの鉄素材として再生されます。
5.新しい製品として生まれ変わる
建物や自動車、街や家庭の中にあるフライパンなどの鉄製品に生まれ変わります。
カーボンニュートラルの実現に向けた、日本の課題
クローズド・ループ・リサイクルされるなど、エコフレンドリーな材質である鉄。一方で、日本には課題もあります。
鉄を作る鉄鋼業は、最も二酸化炭素排出量が多い産業
鉄は石炭を使って鉄鉱石を還元して作られるため、鉄鋼産業は実は最も二酸化炭素の排出量が多い産業でもあります。2016年、日本の全CO²排出量約12億トンのうち、鉄鋼業のプロセスに由来するCO²排出量はそのうちの約16%も占めていました**。
そのため、現在世界で進められている脱炭素社会を実現するには、この鉄鋼業のCO²排出量をどれだけ減らせるのかが重要になってくるでしょう。
**WWFジャパン「大幅なCO2削減となる『鉄リサイクル』の推進[東京製鐵×九州電力 後編]」
鉄のリサイクルで二酸化炭素の排出量を削減できる
これからも鉄を使い続けつつCO²排出量を削減する方法としては、鉄をこれまで以上にリサイクルすることです。
日本の都市に建設されている高層ビルからは、取り壊された建築物などから毎年鉄スクラップが大量に発生しています。このような鉄スクラップを電気の炉で溶かしてリサイクルすると、鉄1トンを製造するときのCO²排出量を3/4も削減できるといわれています。
日本のリサイクル鋼材の生産比率を、欧米並みに高めることが重要
アメリカでは鉄スクラップから作られたリサイクル鋼材の生産比率は70%近くに達し、EUでは40%程度に及んでいます。一方、日本は、まだリサイクル鋼材の生産比率としては、25%程度しかありません。
このリサイクル鋼材の生産比率を欧米並みに上げていけば、日本の鉄鋼業のCO²排出量を大幅に削減し、脱炭素社会へと進んでいけるでしょう。
まとめ
今回は、鉄のリサイクルについてご紹介しました。身近な金属である鉄ですが、実はリサイクルに適したエコフレンドリーな素材であることを知っていただけたのではないでしょうか。まずは、家庭でできる、スチール缶の分別や電化製品のリサイクルなどから、鉄のリサイクルに取り組んで行きましょう。