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なぜ花粉症の原因となるスギの木を切らないの?政府の対策も紹介

花粉 症 なぜ 杉 を 切ら ない

 

毎年春先になると、悩まされている方も多い、スギ花粉症。2019年に行われた調査*によると、スギ花粉症の有病率は38.8%で、およそ3人に1人の割合でスギ花粉症であることが分かります。

そのような国民病といってもいい花粉症に対して、2023年5月、政府は花粉症対策の関係閣僚会議を開き、30年後には花粉の発生量の半減を目指す新たな対策を決定しました。

*環境省「花粉症環境保健 マニュアル 2022

 

 

目次

     

     

     

    政府が発表した、スギの花粉症対策

    花粉 症 なぜ 杉 を 切ら ない

     

    2023年5月、政府は花粉症対策の関係閣僚会議を開き、スギ花粉症に対して対策を行うことを発表しました。スギ花粉症対策として、どのような内容を行う予定なのでしょうか。

    目標としては、10年後にスギの人工林を2割程度減少させるといった対応を進めたうえで、30年後には花粉の発生量の半減を目指すとしています。

     

     

    発生源対策

    ※出典:内閣官房「花粉症対策の全体像(案)

     

    発生源対策とは、スギ人工林の伐採・植替えなどを進めることにより、10年後に花粉発生源のスギ人工林を約2割減少させることを目指していくものです。

    スギ人工林由来の花粉が約2割減少すれば、花粉量の多いシーズンであっても、平年並みの水準まで花粉量を減少させる効果が期待できるとされています。また、30年後には花粉発生量の半減を目指しています。

     

     

    飛散対策

    スギ花粉飛散量の予測 

    環境省や林野庁の持つ精緻化されたデータを民間事業者に提供することにより、民間事業者が実施する予測の精度向上を支援していくとしています。

     

    スギ花粉の飛散防止  

    林野庁は、効果的で効率的な散布技術の開発や薬剤の改良を進めることにより、5年後の実用化を目指してスギ花粉の飛散防止剤の開発を促進します。

     

    発症・曝露(ばくろ)対策

    花粉症の治療

    厚生労働省は診療ガイドライン改訂や対症療法等の医療・相談体制の整備を推進していくとともに、アレルゲン免疫療法(舌下免疫療法等)の開始時期について、医療機関等における適切な情報提供や広報活動を行っていく予定です。

    また、森林組合への協力要請や企業への要請も進めるほか、文部科学省とも連携し、治療法・治療薬の開発に資する大学や国立研究機関での研究開発も支援していきます。

     

     

    花粉症対策製品

    経済産業省が花粉を対策できる商品に関する認証制度について、消費者への認知拡大や認証取得製品の拡大・普及を推進していきます。農林水産省は、スギ花粉症に効果のある「スギ花粉米」の実用化に向け、臨床研究を実施するとしています。

     

     

    予防行動

    環境省や厚生労働省は、花粉への曝露を軽減するための花粉症予防行動について、自治体、関係学会等と連携して広く周知していきます。経済産業省は、花粉曝露を軽減する柔軟な働き方や、企業による従業員の花粉曝露対策を推進する仕組みの整備なども行う予定です**。

    **内閣官房「花粉症対策の全体像(案)

     

     

    スギの木を切らない理由 

    花粉 症 なぜ 杉 を 切ら ない

     

    多くの人が抱えるスギ花粉症の原因である杉の木。スギの木を切って、別の木に入れ替えれば、花粉症に悩まされることもなくなるはずです。では、なぜスギの木を切らないのでしょうか。

     

     

    スギの木を切っても使われないから

    全国各地でスギの植林が行われたのは戦後間もない頃ですが、木々が育つ50年ほどの間にコンクリートなどの建築材が台頭して木材の需要は減ったことや、海外からの安価な輸入材が増えたことなどから、成長したスギの木は切られずに残っているのです。

     

     

    二酸化炭素の濃度を下げてくれるから

    実は、スギの木は二酸化炭素の吸収率がとても高く、二酸化炭素の濃度を下げてくれるため、温暖化といった気候変動を防ぐ役割を担っています。また、スギの木を切って別の木に植え替えるにしても、伐採にも植林にもコストはかかります。そのため、積極的に切ろうとする話にはなかなかならないのが実情です。

     

     

     

    そもそも、なぜ日本にはこんなに杉の木が多く植えられているの?

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    現在のように日本にスギの木が増えた理由としては、戦後に森林を早期に復旧するため、植林が容易なスギが多く植えられたことが挙げられます。また、高度経済成長期の住宅建築に使う木材需要の高まりに応えるため、成長の早いスギが広葉樹林に代わって、多く植林されたこともあるでしょう。

     

    スギの木は、育成に温暖で湿潤な気候に適していますが、雪にも強く多雪地帯でも生育することや、挿し木で増やすことも比較的容易な植物です。また、木目が真っ直ぐで材質としては柔らかいため加工がしやすく、建築材のほか様々な用途に活用できる性質を持つ、有能な品種であったことも多く植えられた理由といえます。

     

     

    自分でできる花粉症対策

     

    花粉 症 なぜ 杉 を 切ら ない

     

    日本のスギの木はすぐに減らせるというものではないため、花粉症の方は自分でスギ花粉に対する対策を取っていくことが重要です。主に、以下のような対策が挙げられます。

     

     

    マスクをつける

    マスクと顔の間に隙間があると効果が半減してしまうため、しっかりと顔に合うサイズを用意し、隙間がないよう口も鼻もしっかりと隠すようにしましょう。

     

     

    衣類の花粉対策を行う

    衣類に花粉が付着しないよう、花粉の飛散するシーズンは、綿やポリエステルの素材など花粉が付着しにくい素材の服を着るようにしましょう。

    また、静電気によって花粉が引き寄せられることを防ぐため、衣類を洗うときは柔軟剤を使用して静電気を防止することも効果的です。

     

     

    室内に持ち込まない

    花粉を室内に持ち込まないように、家に入る前に服や髪をよく払うことが重要です。 また、窓も開けて部屋の換気する際にも、隙間は最小限にして、短時間にしておきましょう。 洗濯物も外干しを避けることをおすすめします。

     

     

    花粉症の対策をしてもツラい時は、病院に行くことも検討を

    花粉 症 なぜ 杉 を 切ら ない

     

    将来的に政府がスギ花粉症への対策を進めるとはいえ、しばらくはスギ花粉の飛散するシーズンにはツラい花粉症の症状が出る人が多くなるでしょう。目がかゆくてどうしようもない時は、冷やしたタオルをまぶたの上にあてると緩和されます。本当にツラい時は無理に耐えずに病院で薬をもらい、花粉の飛散するシーズンを乗り越えましょう!