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森林破壊の原因や影響とは? 森林を守るための対策も紹介
現在、森林破壊が世界各地で問題となっていることをご存じでしょうか。温暖化や砂漠化の原因ともいわれています。今回は、森林破壊の原因や引き起こされる影響、対策などについてご紹介します。
目次
森林破壊とは
自然の回復力を上回るスピードで森林が減少する状態を「森林破壊」といいます。
世界の森林面積は、2010年から2020年の間に年平均で470万ha減少しました*。現在、森林伐採や火災などによって現在世界の森林は減少し続けており、このまま減少が続くと野生生物や人間社会にさまざまな影響を及ぼすといわれています。
*林野庁「森林・林業分野の国際的取組」
森林破壊の原因
森林破壊の原因は、人間の開発に起因するものがほとんどです。主な原因として、以下のようなものが挙げられます。
土地利用の転換や開発
世界的な人口の増加に伴い、森林を開発し、住宅地や農地、工業用地などへ転換しなければならなくなりました。
東南アジアでは森林から植物油「パーム油」の原料であるアブラヤシのプランテーションへ、アマゾンではサトウキビ畑や農園への転換が行われています。
森林の違法伐採の増加
違法伐採とは、国や地方の法令に違反して行われる森林伐採のことです。
許可された量・面積・区域などを超えた伐採や、国立公園や保護区の森林伐採、所有権・伐採権がない森林を伐採する盗伐、許可を受けていない、または許可証を偽造した伐採、木材取引・先住民族などの権利を不当に侵害する伐採などが挙げられます。
全世界で行われている森林伐採の15~30%が違法伐採だといいます。違法伐採は正当に伐採された木材よりもコストが安くなる傾向にあるため、市場価格全体を下げてしまいます。市場価格が下がると林業で生計を立てている人の生活が苦しくなり、持続可能な林業を妨げることにつながるでしょう。
木材の過剰摂取
世界で伐採される森林の約半分は燃料用です。アフリカや中南米などの開発途上国では、調理などに使用する木質燃料(薪や炭)として使われ、先進国では産業用材(製材や合板)、紙の原料となるパルプとして使用されます。
焼畑農業の増加
焼畑農業とは古代から行われてきた農法で、森林を焼き払い、その灰を利用して農地に利用するものです。従来の方法であれば数年間作付けした後に別の土地に移動するため、その間放置された森林は回復する時間がありました。
近年では、焼き払われた森林が十分回復しないうちに農地として使われるため土地が劣化し、森林が育たなくなることが問題となっています。
森林火災による消失
近年の地球温暖化による影響で、森林火災が多く発生しています。また、農地開発の際の火の不始末や落雷なども、森林火災の影響として挙げられます。
森林破壊の影響
森林破壊による影響は、私たち人間だけでなく、さまざまな生物や地球環境などにも影響を与えます。
生態系が崩れる
森林破壊により森林が消失することにより多くの野生動物の食べ物や棲家が失われ、絶滅の危機に追いやってしまいます。
現在、森林をすみかとする世界の野生生物のうち、絶滅の危機が高いとされる種の数は、1万4,000種以上にものぼるとされています**。これらの生物は森林以外に棲む生物とも食物連鎖でつながっているため、絶滅すれば生態系に大きな影響を与えるでしょう。
**WWF「今日、森林破壊を止めるためにできること」
気候変動をもたらす
森林は光合成によって、二酸化炭素を酸素に変えています。
そのため、二酸化炭素を吸収する森林が減少すれば二酸化炭素の濃度が高まり、気候変動や地球温暖化が拡大し、異常気象による水害、森林火災の長期化といった被害が発生することになりかねません。
森林保全のために世界で行われている対策
森林破壊を防ぐことは、SDGsの目標15「陸の豊かさも守ろう」につながっています。森林をはじめとする陸上の生態系を守るために、世界ではどのような活動や取り組みが行われているのでしょうか。
森林保全に対する国際的な合意形成
1992年、ブラジルのリオデジャネイロで開催された国連環境開発会議(UNCED)では、環境分野での国際的な取組みに関する行動計画「アジェンダ21」が採択されました。
「アジェンダ21」では、森林減少対策として、すべての森林の多様な役割・機能を維持することや、森林の持続可能な経営、保全の強化といったことが提唱されています。
持続可能なパーム油の利用促進
2004年に設立された、非営利組織「持続可能なパーム油のための円卓会議(RSPO)」では、生産と流通のプロセスそれぞれに認証制度を設け、最終的に製品となったパーム油がどこで作られたのか、どのように流通したのかを確認できる仕組みを構築しています。
これによって不適切に森林を開発して行うアブラヤシの栽培をなくし、持続可能なパーム油の普及に努めています。
認証制度や法律などの整備
木材や紙製品に対して、きちんと管理された森林からの製品であることを示す「FSC認証」が設けられました。「FSC認証」とは、森林の管理や加工・流通のプロセスが適切かどうかを第三者機関が認証することで与えられる、国際的な認証制度です。森林管理協議会(フォレスト・スチュワードシップ・カウンシル)というNGOが運営しています。
また、日本国内では、合法的に伐採された樹木や木材製品の利用を促進する「クリーンウッド法(合法伐採木材等の流通及び利用の促進に関する法律)」が2017年に施行されました。
国などの公共機関に対して、環境負荷の低減に役立つ製品を率先して購入することを促す、「グリーン購入法」なども施行されています。
森林を守るために、私たち一人ひとりが行動していこう
現在も森林破壊は進行し続けており、その影響は生態系のさまざまなものに及ぶことがわかりました。大切な森林を守るため、世界では多くの対策が取り組まれています。
森林を守っていくために、私たち一人ひとりができることは、以下のようなことが挙げられるでしょう。
・紙の使用を減らす
紙の使用量を減らすと、原料となる木材の消費を減らすことができます。仕事などでペーパーレス化を進めたり、電子書籍を活用したりすることが当てはまります。
・国産材を使用した製品を購入する
木材輸入の自由化により国産材の利用量が低下し、国内の森林が手入れされなくなったため、土砂災害などが増えています。国産材を使用した製品を購入することにより、少しでも国産材の利用量を増やしましょう。
・森林認証マークがついた製品を選ぶ
適切な工程を経て生産された木材や木材製品には、認証マーク「FSC認証」と「PEFC認証」が付いています。これらを目印に、木材製品を購入するようにするといいでしょう。