水とくらし
体内の水分が不足すると? 水を飲む健康効果や水分量を増やす飲み方とは
水分は、私たちの体にとって欠かせない基本的な構成要素の1つです。じかし、もし自分が1日に必要な水分量や水分が不足してしまった場合、身体にどのような影響があるのかをご存じでしょうか。今回は、水を飲むことで得られる効果や、体内の水分量をアップさせるために最適な水の飲み方などとともにご紹介します。
目次
人間の体と水分の関係性
体内の水分量構成
年齢や体脂肪率によって多少のばらつきがあると言われているものの、人間の体の約60%は水分でできています。これは、たとえば体重60kgの成人男性の場合には、そのうちの6割、約36kgが水分ということになります。
体内の水分は、①細胞内にある細胞内液②血液やリンパ液、細胞間液などの細胞外液で構成されています*。
1日に必要な水分量と排出量
▼性・年齢区分別にみた水摂取量(平均±95% 信頼区間)
出典:厚生労働省『日本人の食事摂取基準(2020 年版)』
人間が1日に必要な水分量を算出するためにある実験を行ったところ、生活活動レベルが低い集団は 2.3〜2.5 L、生活活動レベルが高い集団では3.3〜3.5L程度と推定されました。
日本人成人(30〜76 歳)男女 242 人の習慣的な水摂取量の調査によれば、1日の平均摂取量は男性2,423 g、女性2,037 g、男女合計で 2,230 g。年齢別に見ると、30〜49 歳で 2,121 g、50〜76 歳で 2,324 gちなっていて、年齢が上がるほど水摂取量が多くなる傾向が分かりました。
ヒトが体内で利用する水と排泄する水は、ほぼ量的に等しいと考えられています*。したがって、以下のように釣り合いが取れているのです。
・1日の水分摂取量
食事1L
体内で作られる水0.3L
飲み水1.2L
合計2.5L
・1日の水分排出量
尿や便1.6L
呼吸や汗0.9L
合計2.5L**
体内の水分の働き
人の体内の水分には、以下のような役割があります。
- 酸素や栄養を各細胞に運び、不要な老廃物を体外へ排出
- 血液を循環させ、発汗を促して体温を調節
- 新陳代謝が円滑に行われるようサポート
体内で水分が不足すると
体内で失う水分量によって、以下のような影響があります。
5%:脱水症状や熱中症などの症状が現れる
10%:筋肉の痙攣や循環不全などが起こる
20%:死に至る**
また、上記以外にも、以下のようなトラブルが発生する可能性が高まります。
熱中症
汗をかくことで血液中の水分が減少し、そのまま水分補給をせずに脱水状態になると、熱中症が起こるといわれています。
脳梗塞や心筋梗塞
脳血管が閉塞または狭くなることで、脳への酸素や栄養を運ぶ血流が悪くなり、脳組織が壊死、またはそれに近い状態になってしまう脳梗塞。
また、心筋梗塞は、心臓の冠動脈の血流量が下がることで、心筋が虚血状態になって壊死、または壊死に近い状態になってしまう疾患です。
どちらも、体内の水分不足による脱水状態が関係しているといわれる疾患です。
その他(エコノミークラス症候群、頭痛・便秘・むくみ)
その他、体内への水分不足は、以下のような状態におちいる危険性があります。
エコノミー症候群は食事や水分を十分に取らずに、狭い場所で長時間足を動かさないことで、血行不良が起こり発症します。血流が滞ることで血栓ができ、立ち上がった際などに血流に乗って肺の静脈に詰まる「肺塞栓」などを誘発してしまいます。
また、頭痛や便秘、体のむくみといった症状が出る場合もあります。
水の健康効果
肌内部まで潤いを与える
化粧水などで表面から水分を補給しても、肌の内部までは届きません。水を飲むことで、肌の中まで水分を補えます。
また、肌に水分を補うことで、細胞の中の老廃物や毒素が排出されます。必要な栄養素を補うことで古い細胞から新しい細胞へと変わり、肌の新陳代謝(ターンオーバー)が促され、シミやしわ、くすみなどの改善も期待できるでしょう。
痩せ体質に
水を飲むことで筋肉にしっかりと血液が循環し、効率よく筋肉量を増やせます。筋肉量が増えると基礎代謝量も増え、痩せやすい体質になるでしょう。
また、水を飲みながら食事をすることを習慣づけると、食べるペースがゆっくりになって満腹感を得られるので、食べ過ぎを防げます。
血液をサラサラにする
血液がドロドロしている状態とは、血液中に脂肪などが大量にあるため、スムーズに流れず血流が悪くなっています。
適切な量の水を飲むとトイレに行く回数が増えるので、血液中の老廃物が排泄されてサラサラになります。
生活習慣病の予防
腎結石・尿管結石など生活習慣病の発症や再発予防、および重症化予防に関して効果があるとする調査結果もあります*。
体内の水分量を増やす、効果的な飲み方
飲み方1.少量ずつ複数回にわけて
1度に吸収される水分の量はコップ1杯(200ml)程度なので、1度にたくさんの水を飲んでも効果はありません。一気に大量の水分を摂取すると、胃腸に負担もかかってしまいます。
そのため、自分が1日に必要な水分量を200mlで割った回数を目標として飲むようにすると良いでしょう。たとえば1日の必要量が1.2ℓであった場合には、6~8回程度に分けてコップ1杯程度の水を飲むのが最適です*。
飲み方2.先制飲水を意識する
水分が不足して脱水症状などに至る前に水を飲む、「先制飲水」という飲み方を心がけるようにしましょう。水分不足に陥りがちなタイミングとしては、寝る前や運動の前後、お風呂に入る前後、お酒を飲んだ後などが考えられます。
飲み方3.水の飲み過ぎリスクを注意
体液は、水と塩分からできています。大量に汗をかいた後の水分補給として水を大量に飲むと、体液の塩分濃度が薄まってしまい、水分を摂っているのに脱水症状になることも。からだの水分不足(脱水)の対策のためには、水分だけでなく電解質(塩分)の補給も必要です。
まとめ
今回は、体と水の関係性や体の水分量が減るデメリット、水を飲むメリット、体内の水分量を上げる効果的な飲み方などをご紹介しました。水は、私たちの体にとって切っても切れない重要なもの。ぜひ、毎日の生活に効果的な飲み方を取り入れて、健康ライフを満喫してください。
*厚生労働省『日本人の食事摂取基準(2020 年版)』
**厚生労働省『「健康のため水を飲もう」講座』ポスター