水とくらし
土壌汚染とは?原因や引き起こす影響、国が行う対策を紹介
土壌は、私たちが生きていく上で必要不可欠なものです。その土壌が汚れてしまう土壌汚染は目には見えないためわかりづらく、注意しなければなりません。土壌汚染は珍しいことではなく、有害物質を使用している(していた)施設の約半数で土壌汚染が確認されているといいます。
今回は、土壌汚染の原因や引き起こす影響、日本が行っている対策などについて見ていきましょう。
目次
土壌汚染とは
土壌汚染とは、有害物質が土壌に染み込み、蓄積している状態です。土壌は大気中や水の中と比べて拡散されにくく、有害物質が地中に長い間留まりやすいという特徴があります。
土壌を汚染する有害物質としては、鉛、水銀、砒素、六価クロム、カドミウムなどの重金属や、ベンゼン、トリクロロエチレン、テトラクロロエチレンなどの揮発性有機化合物、農薬、油などが挙げられます。
■年度別の土壌汚染判明事例件数(土壌汚染対策法の対象となったもの)
※出典:環境省「パンフレット「土壌汚染対策法のしくみ」
上のグラフを見ると、都道府県などが把握した土壌汚染の調査件数や土壌汚染が判明する件数は、年々増えていることがわかります。
土壌汚染の主な原因
これらの土壌汚染は、なぜ発生してしまうのでしょうか。主な土壌汚染の原因には、以下のようなものがあります。
産業廃棄物の不適切な処理
工場や製造業から排出される産業廃棄物が適切に処理されず、土壌に浸透することで汚染が発生します。さらに、産業廃棄物に重金属や化学薬品が含まれる場合には、汚染はより深刻化します。
農薬や化学肥料の使用
農業で使われる農薬や化学肥料は、適量を超えて使用されると土壌に蓄積し、土壌汚染の原因となります。例えば、除草剤や殺虫剤に含まれる有害成分は、長期間にわたって土壌に残留し続けます。
工業排水や廃液の流出
工場や発電所などから排出される廃液が適切に処理されずに地面に浸透すると、土壌中の成分が変質し汚染が進行してしまいます。油や重金属が含まれる排水は、土壌に甚大な影響を及ぼします。
また、有害物質を過去に使用していた工場なども、土壌汚染が起こる可能性が高いといえます。
大気汚染による影響
工場や自動車の排気ガスに含まれるダイオキシンや鉛などの有害物質が雨とともに地面に落下し、土壌汚染を引き起こします。有害物質が雨となって降る酸性雨は、土壌の性質を変化させてしまい、長期的な汚染につながります。
土壌汚染が引き起こす影響
土壌汚染が起こると、さまざまな経路で私達や生態系への影響があります。土壌汚染によるものとして、以下のような影響が考えられます。
人間への影響
汚染された土に直接触れたり、汚染された土壌から生成された作物を摂取したりすることで、有害物質が体内に侵入し、健康に被害を及ぼす可能性があります。
また、土壌汚染の影響は土だけにとどまらず、土から地下水に溶け出した水を飲んだり、土から放出された大気を吸ったりすることで、有害物質を体内に取り込む可能性もあります。
環境や生態系への影響
土壌汚染は、環境や生態系へも影響を与えることがわかっています。
環境への影響としては、土壌が汚染されることによる悪臭の発生や、地下水への有害物質の溶解、植物の成長阻害などが発生する可能性があります。
また、汚染された土壌や影響を受けた環境は、そこで暮らす生物を死滅させるなど、生態系にも悪影響を与えかねません。
土壌汚染への対策
人間や環境、生態系へ影響を与える恐れのある土壌汚染は、すぐに対処しなければならない問題といえます。土壌汚染は日本で初めて起きた公害といわれていますが、これまで国は以下のような対策を行ってきました。
「農用地の土壌の汚染防止等に関する法律」や「水質汚濁防止法」の制定
土壌汚染が原因で「足尾銅山鉱毒事件」や「イタイイタイ病」などの公害問題が発生したことから、1970年に「農用地の土壌の汚染防止等に関する法律」、1989年に「水質汚濁防止法」が制定されました。土壌汚染による、農地や水質の汚染を防止することが目的です*。
「土壌対策基本法」の制定
2002年に「土壌対策基本法」が制定されたことで、土壌汚染に対する法律が整備されました。この法律は、新たな土壌汚染の防止、土壌汚染の適時適切な把握、土壌汚染による健康被害の防止といった、3つの軸により構成されています。有害物質を取り扱っていた工場を廃止する場合や、土壌汚染の恐れが高い工場跡地などで人体などに影響がリスクがある場合には、土地所有者が汚染状況を調査することが義務付けられています*。
*環境省「土壌汚染による環境リスクを理解するために」
私たち一人ひとりが意識して土壌汚染を防ごう
土壌汚染は、一度発生してしまうと、長期間人間や環境、生態系へ悪影響を与えてしまいかねません。土壌汚染が発生しないために、私たちでも取り組める対策があります。
土壌汚染につながる生活排水をできるだけ減らしていくよう努力してみましょう。食事の際の調理油や食べ残しなどを、そのまま排水に流さないようにすることが大切です。油処理剤などを使用するとともに、汚れたお皿は食べかすをゴミ箱などに廃棄してから、キッチンペーパーなどで拭いた後に洗い流すといいでしょう。
このように、私たち一人ひとりが土壌汚染についてより関心を持つことが、汚染を防ぐことにつながります。