水とくらし

半導体の製造には超純水が必要!生成技術や水確保のための取り組みとは

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半導体の製造工程では高い精度が求められるため、使用する水も許容される純度の高いものでなければなりません。 そのため、多くの半導体工場では「超純水」が使用されています。この記事では、半導体製造に欠かせない超純水の特徴や、超純水を生成するためのろ過技術、半導体企業による水を確保するための取り組みなどをご紹介します。

 

*経済産業省「半導体・デジタル産業戦略 の現状と今後

 

 

目次

     

     

     

    超純水とは不純物を極限まで取り除いた水

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    半導体の製造に使用されている超純水とは、不純物を限界まで取り除いた、純度の高い水のことです。

    一般的な水道水とは異なり、皮脂などの有機物や配管のサビなどの微粒子、細菌などの微生物、二酸化炭素などの水中に溶けている気体などを取り除き、イオンは水素イオン(H+)と水酸化物イオン(OH-)に近づけられています。

     

    わかりやすい超純水の純度として、50mのプールを水道水と超純水で満たした場合の不純物の量を例にご説明します。50mのプールの水中に含まれる不純物の量は、水道水がドラム缶2本以上とされるのに対し、超純水は耳かき1さじ分に過ぎません。明らかな純度の違いがあることがわかるでしょう。

     

    繊細な技術が必要とされる半導体製造の回路洗浄などの工程では、ごく微量の不純物であっても半導体の性能に影響を与えてしまう可能性があります。半導体の洗浄に超純水を使用することで、半導体の回路のショートや不良品の発生といった事態を防ぐことが可能になるのです。

     

     

    超純水を作るためのろ過技術

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    超純水は、半導体製造のほか、医薬品や精密機器の洗浄、実験・分析用途など、高い純度が求められる分野で使われています。超純水を生成するためには、一般的な浄水技術では対応できないため、複数の高いろ過技術を組み合わせて水を精製する必要があります。

    超純水を生成するためのろ過工程の技術を見ていきましょう。

     

     

    1. 活性炭フィルターによる一回処理

    まずは、水道水に含まれる塩素や有機物を取り除くために、超純水の製造初期段階で活性炭フィルターが使われます。多孔質構造をもつ活性炭による処理により、塩素や有機化合物を吸着させることで水の品質を向上させます。

     

     

    2. 逆浸透膜(RO膜)による精製

    続いて、逆浸透膜(RO膜)による精製が行われます。逆浸透とは水に圧力をかけ特殊な膜を通過させることで、不純物を慎重に除去する技術です。この逆浸透膜(RO膜)は非常に厳密で、細菌やウイルス、重金属、溶解性イオンなどの不純物を95~99%除去できるといわれています。

    水は水中の汚れ具合により、水道水などの一般水、純水、超純水というランクに分けられますが、ここまでの工程を経た水は多くの汚れが除去されていることから、純水ランクになります。

     

     

    3. UV(紫外線)ランプの照射による有機物の分解

    逆浸透膜(RO膜)では除去しきれなかった有機物を取り除くために、UV(紫外線)ランプを照射することで水中の有機物を酸化させ、分解・除去します。一般的に、紫外線は波長が短くなるほど殺菌力が強くなるため、主に、185ナノメートルと254ナノメートルといった短い波長を組み合わせて照射されます。

     

     

    4. イオン交換樹脂によるイオン除去

    ここまでに水中に含まれる有機物の汚れをしっかり除去したら、イオン交換樹脂で無機物である微量のイオンをさらに取り除きます。半導体の製造ではわずかな金属イオンの存在でも品質に影響を与えるため、このイオン交換樹脂による工程は必ず行われます。

     

     

    5.超微細フィルターによる最終ろ過

    イオン除去も終えたら、最後にナノレベルの微粒子や微生物を完全に除去するため、超微細フィルターが使用されます。このフィルターを通す穴の直径は、最小の微生物もろ過できる 0.22マイクロメートルほどとされています。

     

    ここまでのろ過工程を経て、初めて超純水の品質が保証されるのです。

     

     

     

    半導体の製造には大量の水も必要

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    半導体を製造する上では、超純水が必要であるだけでなく、大量の水も必要です。特に、最先端の半導体を作る際には、1つの工場で1日あたり数万トンもの水分を消費すると考えられています。

     

    半導体を製造する企業は、必要な大量の水を確保するため、以下のような取り組みを行っています。

     

     

    排水を再利用するクローズド排水処理システム

    近年では、排水を再利用する技術も進化し、水資源をより有効活用できるようになりました。クローズド排水処理システムとは、工場などから出る排水を工場内で処理して再利用することです。工場から排水が排出されず、排水処理が工場内で完結するためこのように呼ばれます。

     

    例えば、半導体の製造・販売を手がける日本テキサス・インスツルメンツは、工業排水をリサイクルして再び工場で超純水として使用する、超純水クローズドシステムを導入しています。

    茨城県にある美浦工場では、操業当初の1980年からこのシステムが取り入れられ、専門業者に処理を依頼している薬品などの廃液や生活排水以外、排水が排出されていないそうです。工場内で超純水を生成し、排水を処理して超純水にする仕組みがあるため、1日500トンほどの工業排水が発生するものの、そのうち95%程度が再利用されています。

     

     

    水資源が豊富な熊本が半導体大手の生産拠点に

    2024年、台湾の半導体大手TSMCの新工場が熊本県に建設されました。熊本県が選ばれた理由には、半導体の製造に欠かせない水資源が豊富なことが挙げられます。熊本県は、生活用水の約83%(全国平均では約23%)を地下水でまかなっており、中でも熊本市は水道水の水源の100%が地下水という、全国有数の地下水が豊富なエリアでもあります**。

     

    また、熊本県のある九州は多くの半導体関連半導体企業が集まり、“シリコンアイランド”とも呼ばれています。半導体関連企業・機関が集まる九州に工場を設置することで、必要な原料や人材を確保しやすく、サプライチェーン網をうまく活用できるでしょう***。

     

    **国土交通省「熊本県の水需給の状況

    ***経済産業省九州経済産業局「シリコンアイランド九州の復活に向けて ~2030年の日本社会を支える九州であり続けるために~

     

     

     

    半導体の製造には水の確保がより重要となる

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    今回は、半導体製造に欠かせない超純水の特徴や超純水を作るためのろ過技術、半導体企業の水を確保するための取り組みなどをご紹介しました。今後も半導体デバイスの微細化は進んでいくと考えられ、製造する企業は純度の高い水の確保はますます重要となっていくでしょう。

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