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水質汚染とは?原因や影響、日本が行う対策も紹介

水質汚染

 

本来、河川や湖沼、海などには、水の汚れを浄化する働きがあります。しかし、その水の汚れが一定以上に達してしまうと、水質汚染となってしまいます。

 

水は、私たち生物にとって生命活動にかかせないものです。水質汚染が進むと、水を飲めなくなったり、海産物を食べられなくなったりするだけでなく、生態系への影響も懸念されます。

 

SDGs(持続可能な開発目標)では、世界中で安全な水の確保が目標の1つとして設定されています。今回は、水質汚染の主な原因や影響のほか、日本が行う対策についてもご紹介します。

 

 

 

目次

     

     

     

    水質汚染の主な原因

    水質汚染

    ※出典:環境省「水質汚だくや土壌汚染ってなに?

     

    なぜ水質汚染が進行しているのでしょうか。主に、以下のような理由が挙げられます。

     

     

    産業排水

    産業排水とは、工場や農場から排出される汚水のことです。産業排水は河川や海に流出され汚染するだけでなく、汚染された排水が土に染みこんで地下水となり、水質が汚染される場合もあります。

     

    かつて産業排水に含まれる有毒物質が深刻な公害を引き起こしたことから、現在日本では事業者が有害物質を除去してから排水を行うことが義務付けられています。

     

    しかし、発展途上国などの世界に目を向けると、まだまだ産業排水を規制していない国も多いのが現状といえるでしょう。

     

     

    生活排水

    生活排水とは、キッチンやお風呂、トイレなど、日々の生活から出る排水のことで、「生活雑水」と「し尿」の2種類があります。生活雑水はトイレ以外のキッチンやお風呂、洗面所などから出る排水のことをいい、し尿はトイレから出る排水のことです。これらの生活排水が河川や海に流れ込むことで、水質汚染につながっています。

     

    農林水産省の公表によると、2023(令和5)年度末の汚水処理人口普及状況を調査した結果*、全国の汚水処理人口普及率は93.3%で、約830万人が汚水処理施設を利用できない状況です。

     

    なお、生活排水が河川や海に排出されると、水面が緑色に染まるアオコや水中のプランクトンが異常発生する赤潮を引き起こしやすくなります。これらが大量発生すると水中の酸素濃度が低下してしまうため、水域の生物の大量死につながりかねません。

     

    *農林水産省「令和5年度末の汚水処理人口普及状況について

     

     

    気候変動

    温暖化により、水温が高くなることでアオコなどの植物性プランクトンが大量発生しやすくなり、手中酸素濃度の低下を招き、生態系に悪影響を与えるリスクがあります。

     

    また、温暖化によって酸性雨が降ることによっても、酸性雨が河川や海に流れこみ、水質汚染が発生します。その酸性の水域に住む魚類や貝類、藻類などの生態系の破壊につながるでしょう。

     

     

     

    水質汚染が引き起こす影響

    水質汚染

     

    水質汚染により、世界中でさまざまな深刻な影響が起きています。実際に、どのような事態が起きているのでしょうか。

     

     

    水棲生物と野生動物などの生態系への悪影響

    水質汚染は、水棲生物やそれを捕食する野生生物などの生態系へ影響を与えます。汚染水は植物プランクトンの体内に入り、それを捕食する生物たちすべてに取り入れられていきます。食物連鎖を通して汚染物質が体内で濃縮されていくため、汚染された魚など水生生物を食べるアザラシやホッキョクグマなどの大型哺乳類、人間なども汚染リスクに晒されています。

     

    また、水質汚染により、水棲生物が減少する可能性もあります。そうなると、それを捕食している生物も減少することになり、結果として多くの野生動物の絶滅などにもつながりかねません。

     

     

    人間の健康被害や感染症の発生

    水質汚染は、人々の健康被害や感染症などの発生にもつながるおそれがあります。水質汚染が進むことで不衛生な水質環境となり、汚染された水を飲料水として摂取してしまうと、健康被害リスクが高まります。

     

    また、発展途上国などでは、水道施設や浄水設備が整っていないために汚染された水を利用せざるおえず、重篤な感染症を引き起こしているケースもあるのが現状です。

     

     

     

    水質汚染への日本の対策

    水質汚染

     

    水質汚染は地球環境にさまざまな悪影響を及ぼすことがわかりました。そこで日本では、水質汚染を防ぐために、どのような対策が講じられているのかを説明します。

     

     

    水質汚濁防止法の制定

    水質汚濁防止法は、水質汚染を防止するための法律として1970年に定められました**。

    この法律により、全国の工場や事業所の排水に対して全国一律基準が作られ、有害物質や排出量の規制だけでなく、健康被害に関する賠償責任も明文化されることになりました。

     

    基準に適さない汚染水を輩出した事業者に対しては懲役や罰金などが科せられるほか、事業者には排出水の濃度を測定することが義務付けられています。

     

    また、産業排水だけでなく生活排水についても、都道府県が生活排水対策重点地域を選定することで、浄化槽の設置や生活排水の対策などを実施しています。

    **環境省「水質汚濁防止法の施行について

     

     

    湖沼水質保全特別措置法の制定

    河川のように流れのない湖や沼は水質汚染が起こりやすく、水質汚染が生じてしまうと元の水質に戻りにくいという特徴があります。そこで、従来からあった水質汚濁防止法による規制に加え、1984年に規制を強化する目的で湖沼水質保全特別措置法が制定されました***。

     

    その後、この湖沼水質保全特別措置法の改正なども経て、湖や沼への負荷量規制、下水道および浄化槽の整備、底泥の土砂を取り除くなどの施策が行われるようになりました。

    ***環境省「逐条解説 湖沼水質保全特別措置法

     

     

     

    水質汚染をなくすために、1人ひとりが気をつけよう

    水質汚染

     

    水質汚染は、生態系へ悪影響を及ぼすだけでなく、私たち人間にとっても、健康被害を受けるリスクなどがあります。日本では産業排水は規制されている今、水質汚染をなくすために重要なのは、生活排水による汚染に気をつけることです。

     

    環境省の調査によると、もしてんぷら油500mlをそのまま流してしまった場合、魚が棲める水質まで戻すためには、浴槽(300ml)×330杯もの水が必要だといわれています。これは、お米のとぎ汁を1杯(2l)流した際でも、浴槽(300ml)×4.2杯分もの水が必要になるそうです****。

     

    私たち1人ひとりがなるべく生活排水を排出しないよう、排水の汚れ具合が少なくなるよう気をつけながら生活していくことが大切だといえるでしょう。

    ****環境省「もしこれだけの汚れを流すと

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