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再生可能エネルギーとは?導入する課題やメリットも紹介
政府は、2040年度の時点で発電量全体に占める各電源の割合について、再生可能エネルギーが「4割から5割程度」、火力が「3割から4割程度」、原子力が「2割程度」とし、再生可能エネルギーが最大の電源になると位置付ける新しいエネルギーの基本計画案をまとめました*。今後、国内では、さらに再生可能エネルギーの重要性が高まっていくと考えられます。
また、従来、発電エネルギーとして、原発は安く、再生可能エネルギーは高いとされてきました。しかし、世界中で大量のパネルの設置が進んだ結果、2009年には1メガワット時あたり359ドルだった太陽光発電のコストが2019年には9割減の40ドルになったのに対し、原子力は123ドルから155ドルと逆に高くなりコストが逆転しました。
ただし、日本では、2022年の再エネ導入量は639万キロワットだった一方で、2023年は12月までに342.6万キロワットに留まります。日本の太陽光発電のコストは世界の約2倍の高さに上り、これから導入に向けて他国並みのコストに改善していくことが求められます。
この記事ではそんな再生可能エネルギーとはどのような電力源であるのかご紹介するほか、現状や課題、取り入れるメリットなどについても説明します。
*経済産業省資源エネルギー庁「エネルギー基本計画(原案)」
**日本経済新聞「再エネ高い」は日本だけ? 太陽光、世界でコスト9割減」
目次
再生可能エネルギーとは自然の力で発電するエネルギー源のこと
再生可能エネルギーとはどのようなエネルギーなのでしょうか。再生可能エネルギーの特徴や種類を説明します。
再生可能エネルギーの特徴
太陽光・風力・地熱・中小水力・バイオマスといった自然の力を電力に変えるエネルギー源のことです。温室効果ガスを排出しないため化石燃料に比べて環境への負荷が低いことや、資源の乏しい日本国内でも生産できることから、現在新たな電力源として期待されています。
再生可能エネルギーの種類
再生可能エネルギーの種類は、主に以下のようなエネルギーがあります。
太陽光エネルギー
太陽光エネルギーは、太陽の光を利用して電力に変えます。ソーラーパネルを屋根などに設置するだけで利用できるため、家庭や企業でも比較的導入が進んでいるエネルギーのひとつです。
風力エネルギー
風の力で風車を回して作られる風力エネルギーは、風の強い地域や海上で利用されることが場合が多く見られます。
地熱エネルギー
地熱エネルギーは、地下のマグマの熱を利用して発電します。特に地熱地帯で有効な自然エネルギーです。
水力エネルギー
高いところから低いところに落ちる水の力を利用した水力エネルギーは、古くから電力源として利用されてきました。ダムだけでなく、水流や農業用水などでも利用可能です。
バイオエネルギー
バイオマスエネルギーは、植物や動物の廃棄物、農作物の残渣などといった、生物由来の有機物を燃焼させることで得られるエネルギーです。バイオ燃料やバイオガスなどがバイオマス発電に利用されます。
世界と日本の再生可能エネルギーの現状
2016年、気候変動問題に関する国際的な枠組みである「パリ協定」を、150か国以上もの温室効果ガスの主要排出国を含む多くの国々が締結しました。このパリ協定では、世界の平均気温上昇を産業革命以前に比べて2℃より十分低く保ち1.5℃に抑える努力をすることや、世界の温室効果ガス排出量をピークアウトさせ、21世紀後半には温室効果ガス排出量と(森林などによる)吸収量のバランスを取ることが長期目標として掲げられています***。
そのため、世界および日本では、温室効果ガスの排出を削減できる再生可能エネルギーの利用が促進されているといえるでしょう。
***経済産業省資源エネルギー庁「再生可能エネルギーとは」
世界の再生可能エネルギーの現状や課題
では、発電電力量全体に占める世界の国々の再生可能エネルギーの電力量の割合は、どのぐらいなのかを見ていきましょう。
■主要国の発電電力量に占める再エネ比率の比較
※出典:経済産業省資源エネルギー庁「再エネの導入」
主要国の中ではカナダの再生可能エネルギー電力量の比率が高く、特に水力は約60%と圧倒的です。カナダは水力資源が豊富で国土の起伏が激しく発電に利用できる河川が多いのも特徴で、古くから水力をメインとした発電が行われてきました。
現在では火力や原子力などほかの発電資源の開発が進んだこともあり、2015年の発電量を州別に見たところ、ケベック州、オンタリオ州、アルバータ州において、全体の69%を水力発電が占めていました。
主要国の中では、カナダに次いで、スペインやイタリアの再生可能エネルギー比率が高いことがわかります。
日本の再生可能エネルギーの現状
上のグラフにあるように、日本の全発電電力量における再生可能エネルギー電力量の比率は、約20%に留まっています。再生可能エネルギーの普及が日本で進まないのは、冒頭に挙げたように発電コストの高いことや、国土が南北に長く地域によって気候が変わるため発電量の予測が難しいこと、地震が高頻度で発生するため発電施設の破損リスクがあることなどが原因にといえるでしょう。
なお、日本の再エネ発電設備容量は世界第6位で、中でも太陽光発電の設備容量は世界第3位に上ります。そのため、国土面積あたりの日本の太陽光導入容量は、主要国の中でも最大級となっています****。
ただし、日本の全発電電力量における再生可能エネルギー電力量の比率は、主要国の中で見るとアメリカと並んで低い割合であるため、今後も再生可能エネルギー比率を伸ばし、主力電源としていくことが望まれます。
****経済産業省資源エネルギー庁「再エネの導入」
日本が再生可能エネルギーを取り入れるメリット
現状では電力量比率を引き上げていくことに課題もある再生エネルギーですが、日本が取り入れていくことにどのようなメリットがあるのでしょうか。具体的にご紹介します。
温室効果ガスの削減
再生可能エネルギーを取り入れるメリットとしては、温暖化の原因となる温室効果ガスの排出削減が挙げられます。従来の化石燃料を燃焼させる際とは異なり、再生可能エネルギーは温室効果ガスを排出することはないためです。
エネルギー供給の安定化
再生可能エネルギーは、発電に利用するのは太陽光や水力といった自然エネルギーなので、石炭や石油のように海外から資源を輸入する必要がありません。再生可能エネルギーの導入を進めることで現在のような資源の輸入依存から脱却し、エネルギーの自給率を高め、エネルギーの供給を安定化させることにもつながります。
新たな産業や雇用の創出
再生可能エネルギーの導入により、新しいエネルギーの開発や利用が生まれるため、新たな産業や雇用の創出も可能です。地域にとって、経済の活性化や持続的な成長も期待できるでしょう。
日本でも本格的な再生可能エネルギーの導入が期待される
再生可能エネルギーとは、太陽光や風力、水力といった自然の力を利用して発電するエネルギーのことです。石油や石炭のような化石燃料に比べて、温室効果ガスを排出しないクリーンなエネルギーであるだけでなく、将来的にも資源が枯渇するおそれがないため永続的に利用できます。
ただし、現状では、日本が再生可能エネルギーの導入を進めるには、発電コストが高い、発電量の予測が難しいといった課題もあります。今後は、パリ協定で決められた温室効果ガスの排出量削減を達成するためにも、これら課題に取り組み、再生可能エネルギーを本格的に導入していくことが望まれます。