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グリーンインフラとは?取り組むメリットや事例をわかりやすく紹介
近年、地球温暖化が加速し、日本でも異常気象や自然災害の発生などが増加しています。そこで、持続可能なインフラ整備として、「グリーンインフラ」に注目が集まっています。
今回は、グリーンインフラとはどのようなものなのか、取り組むメリットや課題、取り入れた自治体の事例などをご紹介します。
目次
グリーンインフラとは?
※国土交通省「グリーンインフラ実践ガイド」
グリーンインフラとは、緑や水、土、生物などの自然環境が持つさまざまな機能や仕組みを、地域や社会の課題解決に活かそうという考え方です*。緑を意味する「グリーン」と、社会を支えるために必要な資本を意味する「インフラストラクチャー」を掛け合わせた、「グリーン・インフラストラクチャー(Green Infrastructure)」の略語です。
*国土交通省「グリーンインフラ」
インフラについては、こちらの記事も併せてご覧ください。
グリーンインフラが必要とされる背景
※国土交通省「【導入編】なぜ、今グリーンインフラなのか」
近年の日本では、経済成長だけを目指すのではなく、豊かな自然環境での健康な生活といった価値観が求められるようになっています。グリーンインフラに取り組むことで、人と自然がより身近に関わり合いながら生活していくことができるようになると期待されています。
また、日本では、人口減少・少子高齢化による土地の利用方法の変化や、気候変動による災害リスクの増大といった課題へ対応していかなければなりません。グリーンインフラへの取り組みを通じて、持続可能で魅力のある国土や地域づくりをしていくことが考えられています**。
また、グリーンインフラの考え方は、2015年9月の国連総会採択された「持続可能な開発目標(SDGs)」とも親和性が高く、世界的なトレンドから見ても、より重要性が高まっているといえるでしょう。
**国土交通省「【導入編】なぜ、今グリーンインフラなのか」
グリーンインフラに取り組むメリット
近年では、グリーンインフラのメリットが注目され、新しい都市計画や住宅地など、さまざまなところで取り入れられています。グリーンインフラに取り組むメリットには、以下のようなものがあります。
メリット1. 自然災害の防止・軽減
グリーンインフラに取り組むメリットとして、自然災害の防止や軽減ができることが挙げられます。
近年、日本および世界では、気候変動により、台風や集中豪雨、津波、土砂災害といった自然災害が多く発生しています。グリーンインフラを活用することで、そういった自然災害の防止・軽減につながることが期待されているのです。
例えば、雨水を緑地に浸透させて水害を防ぐ、樹木を植えることで風を防ぐといったようなことが、グリーンインフラを利用した自然災害への対策例といえます。
災害については、こちらの記事も併せてご覧ください。
水害が起こりやすい場所は?水害を減らす家造りや水害対策も紹介
水害の種類や原因は?水害の発生時に気をつけたいポイントも紹介
メリット2. 地域の活性化
地域住民の交流を促して活性化につながることも、グリーンインフラに取り組むメリットの1つです。
グリーンインフラとして緑や水辺が整備されると、地域で生活する人々にレクリエーションや癒しの場が生まれます。
例えば、公園の砂地を緑地に変えると、景観に緑が増え美しくなることに加え、樹木や葉の陰ができることからそこで活動する人の熱中症を防ぐことも期待できます。また、そうしてできた場をイベントなどに活用することで、地域の人々のコミュニケーションの場にもなるでしょう。
メリット3. 生態系などの環境保全
グリーンインフラは緑を増やすだけでなく、生態系といった環境保全につながることもメリットです。
何もなかった場所に草や木が生え、林となり、最終的に森林地となることを植生の遷移といいます。また、台風や水害で土壌や樹木が失われても、植物が芽吹き、元の姿に再生する自然の機能は復元力と呼ばれます。
こうした自然の持つ遷移や復元力に着目してグリーンインフラとして整備していけば、費用や手間をかけずに環境が成長したり育成できたりする、持続可能なインフラとなり得るでしょう。
グリーンインフラに取り組むデメリット
一方、グリーンインフラに取り組むことでデメリットもあります。
どのような点に注意しなければいけないのか確認しておきましょう。
デメリット1. 初期費用がかかる
グリーンインフラに取り組むデメリットとして、初期費用がかかってしまう点があります。
グリーンインフラを整備するためには、その地域に合わせて全体の設計から始めなければならず、どうしてもある程度のコストはかかってしまいます。
また、日本は温暖で湿気のある気候です。欧米などで成功している事例を参考に導入を進めると、当初の想定以上に植物が早く成長してしまい、メンテナンスが前倒しになり想定より早期に費用が発生してしまう場合があることにも注意が必要です。
デメリット2. メンテナンスに手間がかかる
整備後のメンテナンスに手間がかかることも、グリーンインフラに取り組むデメリットといえます。例えば、緑化対策の場合には、緑の水やりや剪定といったメンテナンスが欠かせません。
しかし、長期的に使用できることを考えると、グリーンインフラは費用を節約できる持続可能な手段だといわれています。
そのためにも、導入後メンテナンスに携わる地域の人々に理解を得られるよう、グリーンインフラの管理・運用方法まで設定しておくことが重要です。
グリーンインフラの事例
グリーンインフラは、今や日本のさまざまな自治体で取り組まれています。
実際にグリーンインフラを取り入れた、自治体の事例を3つご紹介します。
【宮城県・岩沼市ほか】緑の防潮堤
※出典:国土交通省「グリーンインフラストラクチャー(取組等の事例)」
・地域課題 : 海岸保全、大規模な津波に対する浸水面積減少などの減災効果の確保
・活用した自然環境の機能:減災(樹林帯が有する津波減衰効果などの活用)
東日本大震災で大きな津波被害を受けた宮城県では、津波を防ぐためにグリーンインフラを活用し、「緑の防潮堤」を整備しました。
防潮堤に樹木を植えることで、浸水面積や浸水深を減らすなどの減災効果のある粘り強い構造の海岸堤防を築造。津波が堤防を越えた場合に堤防が壊れるまでの時間を遅らせ避難時間を稼ぐとともに、浸水面積や浸水深を減らすなどの効果も期待されています***。
【山口県山口市】山口県一の坂川におけるホタル護岸の整備と地域振興
※出典:国土交通省「グリーンインフラストラクチャー(取組等の事例)」
・地域課題:治水、減少したホタルの復活、地域振興
・活用した自然環境の機能:地域振興(空間形成、景観形成、地域コミュニティ)) 環境(生物の生息空間の創出)
戦後の水質汚染によりホタルの発生数が減少した山口県にある一の坂川では、1971年の台風19号による被害を受けた河川改修の際に、生物や景観に配慮した護岸(ホタル護岸)を整備しました。
1987年からは、地域の小・中学校によるホタルの飼育と放流などが始まり、地域活動として定着。 現在は、ゲンジボタル発生地として県の観光スポットの1つになっています***。
【福岡県福津市】上西郷川の多自然川づくり
※出典:国土交通省「都市河川における多自然川づくり - 地域と連携して豊かな水辺を創造する -」
・地域課題 : 区画整理事業に伴う都市開発、 上西郷川の安全度向上、自然再生
・ 活用した自然環境の機能:環境(生物の生息空間の創出))
福岡県福津市では、URの土地区画整理事業に伴う住宅開発に合わせて、河川改修事業を計画しました。学識者の積極的な関与を受けつつ積極的に市民の参加してもらい、模型を使用して整備される川のイメージを共有しました。
片側を土手として水辺に近づきやすい空間とするとともに、合流する西郷川との合流点の調節池をビオトープ池として整備。今では、川周辺に生息する生物の種類や個体数が増加するなど、自然環境が大きく改善しています***。
***国土交通省「グリーンインフラストラクチャー(取組等の事例)」
グリーンインフラの活用について意識を持とう
今回は、グリーンインフラについての基本情報や取り入れるメリット・デメリット、事例などについてご紹介しました。
今ある自然資源を活かしつつ、すべての生物にとって暮らしやすい持続可能な環境を整備するには、グリーンインフラの活用が欠かせません。
SDGs(持続可能な開発目標)の目標を達成するためにも、グリーンインフラを取り入れた自然環境の保護について、積極的に自分で考え関与していくことが大切です。
インフラツーリズムについては、こちらの記事も併せてご覧ください。