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インフラとは?意味や種類、世界・日本における課題も紹介
近年はインフラという言葉がさまざまな意味で使われているため、インフラとは具体的にどういうものなのかがわからないという方も多いかもしれません。今回は、インフラの概要や種類、直面している課題などについて詳しくご説明します。
インフラとは
インフラとは、「下部構造」という意味を持つ英語の「infrastructure(インフラストラクチャー)」を略したもので、産業や生活の基盤となる下部構造といった意味で使われています。
インフラとは生活の基盤であり、人々が快適に生活を送るために必要な設備やサービスのことで、ライフラインとも呼ばれます。それがないと、日常生活を送ることが困難になったり、不便になったりしてしまうでしょう。
目次
インフラの種類
ひと口に「インフラ」といっても、さまざまな意味があります。ここでは、インフラの種類について説明していきます。
広義と狭義の「インフラ」
インフラという言葉には、広義と狭義の意味があります。
広義のインフラとしては、道路や鉄道、水道、通信といった公共性が強く、国や自治体などが整備するものを指します。広義のインフラの中でも、道路や鉄道、港湾などは「社会インフラ」、公園、学校などは、「生活インフラ」とも呼ばれます。
一方、狭義のインフラとしては、電気やガス、水道といった人の生活に欠かせないものが狭義の意味での「生活インフラ」とセグメントされたり、企業などの組織内で社内ネットワークを構築することが「社内インフラ」と称されたり、病院・学校などの公共施設などが「公共施設インフラ」といわれたりしています。
また、インフラに関する新しい用語として、IT分野における企業などの組織内で情報システムを稼動させる基盤となる要素や総体を意味する、「ITインフラ」もあります。
5大生活インフラ
先程ご紹介した「生活インフラ」の中には「5大インフラ」があり、「電気・水道・ガス・通信・交通」のことを指します。これらは私達の生活基盤の中でも、特に欠かせない重要なインフラとされています。
この5大生活インフラは、災害などで1つでも停止してしまうと、日常における生活の質や安全が脅かされてしまう、重要なものです。
そのため、この5大インフラは、多くのインフラの中でも特に強靭化する必要があり、非常時でもすぐに機能が停止しないよう整備しておかなければならないといえるでしょう。
ITインフラ
近年利用されるようになった新しいインフラの関連用語の中に、「ITインフラ」があります。ITインフラとは、IT関連の中で基盤となる設備のことを指します。
ITインフラの構成要素としては、サーバーやパソコン、ストレージなどといった物理的な設備である「ハードウェア」と、OSやミドルウェアなどといった物理的ではない設備である「ソフトウェア」があります。
インフラにおける課題
私達の生活に欠かせないインフラは生活全般にかかわる幅広い種類があるため、課題も多くあります。視点を世界で見た場合と日本の中で見た場合に分けて、インフラにおけるそれぞれの課題をご紹介します。
世界にあるインフラの課題
まずは、世界のインフラにおける課題からご紹介していきます。特定の地域でのインフラ整備の遅れやインターネットの未普及は、その地域の経済発展を妨げてしまうことにもつながっています。
途上国ではインフラ整備が遅れている
「インフラ整備率」は、その国や地域で生活や産業を支える基盤であるインフラがどの程度整っているかを示す数値のことです。途上国のインフラ整備率は、高所得国の平均と比較するとおよそ1/10といわれています。
日本財団によると、世界の約26億人が安定して電気を使うことができず、トイレなどの基本的な衛生施設を使えない人も約20億人います。また、約8億人近くが安全な水資源にもアクセスできておらず、電話サービスを利用できない人も約10〜15億人いるそうです*。
こうした途上国におけるインフラ整備の遅れは、SDGsの観点からも解消しなければならないといえるでしょう。
また、途上国ではこのようにインフラ整備率が低いことにより、現地での農作物の加工は30%ほどに留まるなどし、企業の生産性は全体で40%低下しています。このようなインフラ整備率の低さが、途上国の国家的な低所得にもつながっているのです**。
インターネットが普及していない地域もある
IT技術を利用したビジネスが多く、インターネットによる情報共有が欠かせない現代では、通信設備といったインフラも必要不可欠です。
しかし、2022年の時点で、世界の1/3の約27億人がインターネットを利用できていないそうです。特に、アフリカ大陸の国々においては、インターネットを利用できる人は全人口の約40%しかいません*。
インターネットの普及率が低いことは、ビジネスの機会の減少や、生産性の低下にもつながっています。また、情報が得られないことで地方に住む人が都市部から切り離され、平等な社会を構築しにくいことも問題といえるでしょう。
*日本財団「日本財団ジャーナル インフラってなに? なぜ、インフラがないと国が豊(ゆた)かにならない?」
**国際連合広報センター「持続可能な開発のための2030アジェンダ採択 — 持続可能な開発目標ファクトシート」
日本にあるインフラの課題
続いて、日本にはインフラについてどのような課題があるのでしょうか。具体的に見ていきましょう。
既存のインフラが老朽化への懸念がある
日本にある道路や水道などのインフラの多くは、高度成長期の時代に作られたものです。そのため、インフラが作られてから約50年経った現在、急速に老朽化が進むと懸念されています。
過去の災害時に、老朽化したインフラが被害の拡大を招いた事例もあります。また、水道管の破裂や橋の破損、トンネルの天井の崩落といった、インフラ設備が老朽化による影響も日常的に発生しています。
インフラの老朽化については、こちらの記事も併せてご覧ください。
インフラ分野のデジタル化が遅れている
インフラ整備を行う建設業では、近い将来就業者の高齢化による大量離職が見込まれることから、国は以下のインフラのデジタル化対策を進めています。
・建設現場の生産性向上への取組み
建設業の生産性向上を図るため、国土交通省では、建設現場においてICT活用等を進める「i-Construction(アイ・コンストラクション)」を推進しています。「i-Construction」の主要な施策である「ICT施工」は、3次元設計データを活用することで、UAVやレーザースキャナを用いた3次元測量や、自動制御されるICT建設機械などで施工の効率化させていくものです。
※出典:国土交通省「国土交通白書 2023 第1節 国土交通省のデジタル化施策の方向性」
・道路システムのデジタル・トランスフォーメーション「xROAD」の推進
道路の調査・計画や工事、維持管理、道路利用者の利便性向上などの場面におけるデジタル・トランスフォーメーションを「xROAD(クロスロード)」と名付け、施策を推進しています***。
***国土交通省「国土交通白書 2023 第1節 国土交通省のデジタル化施策の方向性」
※出典:国土交通省「国土交通白書 2023 第1節 国土交通省のデジタル化施策の方向性」
インフラ整備は世界や日本において重要な課題の1つ
私達が毎日安全に文化的な暮らしをしていく上で、インフラは欠かせない重要な役割を担うものです。インフラの整備は、SDGsにも関わりが深い、世界中で取り組まなければならない課題でもあります。いつもインフラが整備されている今日の日本の状態を当たり前とは思わずに、世界中でインフラが整備できるよう、私達一人ひとりの意識も高めていくようにしましょう。
日本のインフラを巡るインフラツーリズムについては、こちらの記事も併せてご覧ください。