水とくらし
地球温暖化により海面が上昇する!沈むおそれのある国や島は?
地球温暖化とは、空気中にある二酸化炭素(CO2)やメタン、フロンなどの温室効果ガスが増え、宇宙に放射しようとしていた熱が地表に溜まることで、地球上の気温が上昇したり気候が変化したりすることです。工業化が始まった1750年から、世界の気温は1℃上昇したといわれています*。
「温暖化」が進むと、私達にとってどのような影響があるかご存じでしょうか?海面上昇が起こる原因や温暖化を防ぐ対策についてもご紹介します。
*環境省『おしえて!地球温暖化』
目次
地球温暖化が進むと、世界にどう影響がある?
近年、地球温暖化が進んでいると、ニュースなどで耳にしたことがあるのではないでしょうか。現在より、1.5~2℃世界の気温が上昇すると、以下のような影響があることが考えられます。
極端な気温や降水になる
世界のほとんどの地域で、気温がより頻繁に極端に高くなります。また、 熱波の頻度や持続期間も増加するでしょう。 中緯度の地域のほとんどと湿潤な熱帯地域では、極端な降水がより強く、より頻繁になる可能性も非常に高まります。
北極海の夏の海氷が減少する
アザラシなど北極海に棲む生き物の生息地がなくなり、生態系への影響も出てきています。
現在より気温が1.5℃上昇すると、100年に1回は夏に海氷が消失し、2℃上昇すると、少なくとも10年に1回は夏に海氷が消失するといわれています。
海面の水位が上昇する
国土全体の土地の高さが低い国は、国土が消失する危機を抱えています。特に、小さな島に住む地域の人々は、上昇する水位に自分たちの生活を脅かされています。
現在より気温の上昇が1.5℃までなら、2100年までの海面の水位上昇はプラス0.26〜0.77mと予測され、2℃上昇する場合に比べると水位の上昇は約0.1m低く、リスク人口を最大1,000万人減少できます。
気温の上昇が1.5〜2℃になった場合には、南極氷床が不安定化し、グリーンランド氷床は不可逆的な消失を引き起してしまう可能性があります。そうなれば、数百〜数千年にわたり、海面水位が数m上昇しうると予想されています。
極端な気象現象や災害が発生する
集中豪雨や干ばつなど降雨パターンが変動したり、水害・森林火災・ハリケーン・熱波などの発生数が増加したりすることにより、自然災害などの被害が発生する可能性が高まります。
洪水の発生
世界の主な河川が洪水の影響を受ける割合は、温暖化とともに 増加します。 洪水の影響を受ける人口は、1976~2005年を基準として、 気温が1.5℃上昇すると100%増加し、2℃上昇する場合は170%増加するとされています。
食糧の不足
穀物の収量量が減少する上、世界的な需要増加も影響して、 穀物を使った製品の価格が上がってしまうため、貧しい国や地域では食糧が不足してしまいます。また、農作物が育ちにくい地域も拡大するでしょう。
20世紀末の水準よりも気温が4℃以上上昇してしまうと、世界的な食料需要の増大と組み合わさり、世界的かつ地域的な食料の確保に大きな影響があることが考えられます。その影響は、低緯度地域で特に 大きくなると考えられます。
気温の上昇が1.5℃であれば、サハラ以南、東南アジア、ラテンアメリカなどの地域では、穀物の減収と質の低下を抑えられるでしょう。 2℃以上の上昇となってしまうと、サヘル、アフリカ南部、地中海、中央ヨーロッパ、アマゾンでは、食糧の入手がより難しくなる可能性があります。
生態系の変化
地球温暖化により、海洋生物種の世界規模の分布が変化すると考えられます。影響されやすい海域では、生物の多様性が低減します。多くの生物種は、 中~高の気候の変化速度で、生息に適切な気候条件を得られないと予想されるためです。
気温が1.5℃上昇すると、サンゴ礁が70~90%が減少するほか、昆虫の6%、植物の8%、脊椎動物の4%が生息域の半分以上を失うと考えられます。 さらに、2℃以上上昇した場合には、サンゴ礁の99%以上が消失するだけでなく、海の生態系の不可逆的な消失リスクが高まります。また、昆虫の18%、植物の16%、脊椎動物の8%が生息域の半分以上を失うでしょう**。
**環境省『おしえて!地球温暖化』
地球温暖化によって海面上昇が起こる原因
地球温暖化の影響のひとつに、海面上昇があります。海面上昇が起きる原因には、主に2つ挙げられます。
まずは、気温の上昇により、南極やほかの山岳氷河、山に残る万年雪が溶けることにより、海水の量が増加するためです。
もう一点は、地球温暖化により、海に蓄積された熱で海水の体積が膨張してしまうためです。
地球温暖化による海面上昇で沈む国とは
温暖化により、海面上昇が起きることでどの国や地域に被害があるのでしょうか。以下のような地域が考えられます。
海面上昇の被害がある国・地域
現在、すでに海面上昇の被害がある国・地域として、モルディブ諸島・チャゴス諸島・ツバル・キリバス・マーシャル諸島・トケラウなど、太平洋やインド洋にある島々があります。実際に、これらの国や地域では、多くの沿岸部分で数十㎝ほどの浸水が確認されています。
海面上昇の被害があると、食糧や水にも影響がある
上に挙げた国や地域では農業に携わる人が多いため、農作物にも被害が発生しています。海面の上昇によって土地に塩害があると、育てている農作物がうまく育たず、食糧不足に陥ってしまいます。
海水を含む帯水層の上部に密度差によってレンズ状に浮いている淡水域を「淡水レンズ」といいますが、島や半島などの周囲を海に囲まれた地域である環礁島の多くは、生活用水の供給を淡水レンズに頼っています。
しかし、海面上昇によりその淡水レンズに海水が流れ込んでしまうと、貴重な水を得られなくなってしまい、水不足にもなってしまうでしょう。
世界が取り組む地球温暖化のための対策
地球温暖化のために、世界ではどのような対策が取られているのでしょうか。以下が挙げられます。
京都議定書とパリ協定の締結
気候変動問題に対する国際的な枠組みとして、「京都議定書」と「パリ協定」があります。この2つの枠組みの違いとしては、2020年までの世界の地球温暖化対策目標を示していたのが京都議定書で、その後を継いで2020年以降の将来の枠組みが定められたものがパリ協定です。
また、京都議定書では先進国(日本、米国、EU、カナダなど)だけに温室効果ガスの削減目標が示されていたのに対し、パリ協定では先進国・途上国関係なくすべての締約国が対象となっている点も、大きな違いといえるでしょう。
パリ協定では、「世界の平均気温上昇を産業革命以前と比べて2℃より十分低く保ち、1.5℃以内に抑える努力をする」という世界共通の長期目標が掲げられています。また、先進国・途上国関係なく、すべての国が各国の事情を加味して、5年ごとに「国が決定する貢献」といわれる削減目標を、自主的に作成・提出することも義務づけられています。
再生可能エネルギーによる世界各地の取り組み
再生可能エネルギーとは、太陽光発電、水力発電、風力発電、バイオマス発電、地熱発電などがあり、石油といった化石燃料のような枯渇する可能性のある燃料を使わずに、太陽や水といった自然界にある力で発電するエネルギーのことです。
世界ではどのような再生可能エネルギーが取り入れられてきたかというと、まず、イギリスでは、国土が海に囲まれていることから、主に風力発電が利用されてきました。
アメリカでは主に太陽光発電と風力発電の利用が拡大していて、カリフォルニア州などのいくつかの州では、2045年から2050年までに、「電力の割合をクリーンエネルギーを100%にすること」を目標に設定しています。
なお、日本では、1980年ごろから、再生可能エネルギーとして太陽光発電の導入が進められてきました。
企業が行う温暖化対策
民間企業でもさまざまな温暖化対策が実施されています。
<企業の温暖化対策例>
【IKEA】
・違法伐採されていない木材である「フェアウッド」がパッケージ。
・1度に大容量の製品の輸送が可能になる「フラットパック」を採用する。
【Patagonia】
・2025年までに、すべての製品に再生可能素材またはリサイクル素材のみを使用する。
・世界中の森林再生などの二酸化炭素回収プロジェクトに投資している。
【H&M】
・自社ブランドに関わらず不要な服を回収し、古い服から新しい生地を作る循環型の生産を行う。
・多量のマイクロファイバーを排出してしまうポリエステルやアクリルに代わり、ヒマシ油を用いた糸や、サボテンから作られる植物由来のレザー、バイオファイバーなどを新素材として使用している***。
***株式会社ミサラス『地球温暖化による海面上昇への対策、私たちにできることはあるの?』
まとめ
地球温暖化は世界にさまざまな影響を及ぼし、国や地域が沈んでしまうぐらい深刻なものです。この先も将来にわたって私たちが美しい地球を残していくためには、さまざまな対策はもちろん、私たち一人ひとりが地球温暖化を防ぐという意識を高めていくことが重要です。
家の中の照明を電力使用量の少ないLED照明に変えたり、化石エネルギーを使用する車をなるべく使わずに公共交通機関を利用するなど、個人でできることは少ないですが、日々対策を行うことで意識づけしていくようにしましょう。