水とくらし

世界における水資源の現状は?問題解決のために行われている取り組みも紹介

世界 水 資源 問題

 

日本では、水道の蛇口をひねれば、安全に飲むことのできるきれいな水が流れることが当たり前ですが、実は、世界では、いつも安全に管理された水を利用できない人も多くいます。

今回は、世界の水資源に目を向けて、問題となっていることや解決ための会議、取り組みなどをご紹介します。

 

 

目次

     

     

     

    世界における水資源や水問題の現状

    世界 水 資源 問題

    出典:国土交通省『水資源に関する世界の現状、日本の現状

     

     

    地球の表面の約70%を覆う、約14億km3とされる地球上にある水の約97.5%は海水で、淡水は残りの約2.5%のみです。その上、その淡水の約70%は氷河や氷山で、残り約30%のほとんどは土の中の水分、または地下水です。そのため、人間が生活に利用しやすい水は淡水のうち約0.4%しかありません。

     

    世界に生活に適した水が少ないことから、水に関する問題を抱えている国や地域をご紹介します。

     

     

     

    世界の水問題①「安全な水」を利用できない人がいる

    世界 水 資源 問題

    出典:ユニセフ『ユニセフの主な活動分野|水と衛生

     

    上の図は、2022年における、世界の人々の飲み水へのアクセス状況を表した円グラフです。

     

    世界では約22億人が安全に管理された飲み水を利用できておらず、中でもこのうち約1億1,500人は、湖や河川、用水路といった未処理の地表水を飲料水として利用せざるを得ない状況です。

     

    「安全に管理された水」という定義は、SDGsが採択された2015年に初めて使われた言葉です。「水質が安全である」だけでなく、「必要なときにいつでも手に入れられる」ということも条件として示されました。

     

     

     

    世界の水問題②「下水等の衛生施設」を利用できない人がいる

    世界 水 資源 問題

    出典:ユニセフ『ユニセフの主な活動分野|水と衛生

     

    上の図は、2022年における、世界の人々の衛生施設(トイレ)へのアクセス状況を表した円グラフです。

     

    世界では約34億人が安全に管理された衛生施設(トイレ)を使用できておらず、この中でも約4億1,900万人は家や近所に使用できるトイレがないため、道端や草むらに用を足す屋外排泄をせざるを得ません。

     

    屋外排泄は衛生状態の悪化による感染症の流行などの健康上の懸念もありますし、そのまま川などに未処理の排水が流されることにより、水質汚染などにつながることもあります。

     

     

    世界の水問題③今後の人口増加によって水需要が高まり、水が不足する人が増える可能性がある

    世界の総人口は2050年には約97億3,000万人になると予測されており、世界中での人口増加に従って、必然的に生きるために必要な水需要も高まります。 2050年には、深刻な水不足に見舞われる人口は、世界人口の40%にも上る39 億人にも上る可能性があるといわれています*。

     

    *国土交通省『水資源問題の原因

     

     

    46年ぶりの水に特化した国際会議「国連水会議2023」の開催

    世界 水 資源 問題

    ※出典:国際連合広報センター『2023年国連水会議:プレスキットから【5つのテーマ領域に関する事実と数字】

     

    このように世界の水の利用や管理にはさまざまな課題があるため、世界で水に特化して議論し具体的な対策につなげるため、2023年にニューヨークで「国連水会議2023」が開催されました。水に特化した国連会議の開催 は、1977 年 3 月にアルゼンチンで開催されて以降、46年ぶりとのことです。

     

     

    開催の目的は、世界的な水問題への認識を高め、協調行動を決定すること

    国連水会議は、正式名称を『国連水と衛生の行動の10年(2018-2028年)の実施に関する包括的中間審査のための2023年会議』といいます。

     

    「国連水会議2023」開催の主な目的は、世界的な水資源の危機や水問題への認識を高めるとともに、世界の参加各国で水関連の目標を定め、ターゲットを達成するための協調行動を決定することでした。

     

     

    「国際水会議2023」はSDGs の分岐点になったとされる会議

    会議では、2015年に開かれた「国連持続可能なサミット」で採択されたSDGs(持続可能な開発目標)の17の目標のひとつに定められている、目標6の「清潔な水と衛生について」を達成するため、気候変動や強制移住、紛争の要因としての水の危機から、健康、貧困削減、食糧安全保障に関する重要な役割まで、水をめぐるさまざまな討議が行われました。

     

    併せて、水量に関するデータ収集の慶全やガバナンス強化、水分野における資金不足などの解決策についても議論されました。その結果、水に関するSDGs目標6を達成するためには、年間1,820億~6,000億ドル以上の資金が必要という現状を考慮し、そのための資金調達と革新的なその手段が必要である重要性が強調され、新しいイノベーションや大規模な投資が呼びかけられるなど、これまでよりも水問題により踏み込んだ内容となりました。

     

     

    変革のための「水行動アジェンダ」に700以上ものコミットメントが集まる

    今回の「国連水会議2023」の主な成果として、「水行動アジェンダ」が採択されました。世界的な水の「危機」を「安全」に転換する取り組みの推進を目的としており、会議では世界各国の政府や団体から、700以上にも及ぶコミットメントが集まりました。

     

    具体的なコミットメントの内容を、いくつかご紹介します。

    例えば、日本政府は、アジア太平洋地域が抱える水に関する社会的課題の解決に向けて、今後5年間で36.5億ドルの資金援助を行い、質の高いインフラ整備に貢献すると発表しました。

     

    ほかには、アジア開発銀行も、水に関する取り組みに110億ドルを投資するとともに、2030年までにアジア太平洋地域と世界全体に対し、それぞれ1,000億ドルを提供することも発表しました。

     

    民間分野では、企業5社とアメリカ政府が、水や衛生施設、衛生へのアクセスを500万人に提供することを目的として、共同でウォーター・アクセス・ファンドに1億4,000億ドルを投資することを発表しています。

     

    今回の会議で話し合われた「世界水会議2023」のコミットメントは、それ以降に開催される国際会議の場で具体的に話し合われ、具現化されつつあります。

     

     

    水問題の解消に向けて世界で行われている取り組み

     

    世界 水 資源 問題

    ※出典:財団法人日本ユニセフ協会『ユニセフの取り組み

     

    こうした世界的な水の問題の解消に向けて、世界ではさまざまな取り組みが実施されています。その中から、いくつかご紹介いたします。

     

     

    国連による、SDGsの目標6「安全な水とトイレを世界中に」を実現させるための取り組みの推進

    SDGsの目標6「安全な水とトイレを世界中に」を実現に向けて、国連が世界各国に向けて働きかけています。

     

    具体的には、安全な飲み水への普遍的なアクセスや、下水・衛生施設へのアクセス、水不足に陥る人の数を大幅に減少させることなどを示した8つのターゲットを設定し、すべての人々が安全な飲料水やトイレなどの衛生施設を利用できるようにするための具体的な対策を推進しています。

     

     

    ユニセフによる、子どもたちが安心して暮らせるための給水設備や安全設備の新設

    国連の機関のひとつであるユニセフ(国連児童基金)は、安全な飲料水を飲めるようにするために井戸などの給水設備を作ったり、衛生的な生活を支えるトイレを設置したりするといった活動を行っています。

     

    また、子どもたちが通う学校を通じて、石けんを使って手を洗うといった衛生習慣を広める活動も併せて実施しています。

     

     

    NGOによる、安全で衛生的な水を利用できるようにするための各種支援

    国際NGOワールド・ビジョンは、2030年までにすべての人が安全かつ衛生的な水を利用できることを目標に、さまざまな支援を行っています。

     

    具体的には、浄化槽や水タンクなどの衛生設備の設置といった物理的な支援を実施しています。そのほか、地域の人々が水資源を自主管理できるよう住民組織の立ち上げ・運営支援、きれいな水の重要性や正しい手洗いの方法などを普及させる活動なども行っています。

     

     

     

    まとめ

    世界では安全に管理された飲み水が手に入らなかったり、衛生施設が利用できなかったりする地域もあります。そのため、国際会議の場で水に関する問題について話し合われたり、世界各国の団体が水問題を解消するためのさまざまな取り組みを行っていたりします。

     

    日本でも、安全な水と衛生分野におけるODA(政府開発援助)や研究が進められている「海水淡水化技術」などで、世界の水問題に貢献しています。

     

    私たち一人ひとりも、SDGs目標6「安全な水とトイレを世界中に」を達成するための第一歩として、日常で使う水を節水したり、生活排水中の汚れをなるべく減らしたりするという努力をしながら、環境を守ることを考慮しながら生活していくと良いでしょう。